逆行列の転置行列について知っておきたい性質が一つあります。それは逆行列には、転置行列の逆行列と、逆行列を転置した行列は同じであるというものです。式で表すと以下の通りです。
\[(A^T)^{-1}=(A^{-1})^T\]
このページでは、この性質について解説します。
例として以下の行列 \(A\) を用います。この行列を転置した \(A^T\) も示しておきます。
\[
A=
\left[ \begin{array}{cc} 2 & -2 \\ 3 & 1 \end{array} \right]
,\hspace{4mm}
A^T=
\left[ \begin{array}{cc} 2 & 3 \\ -2 & 1 \end{array} \right]
\]
この行列の逆行列を転置したもの \((A^{-1})^T\) と転置行列の逆行列 \((A^T)^{-1}\) は 同じものになります。少しでも理解の助けになるように、この点を以下のアニメーションで示しています。
このようにどちらも同じ値になります。
\[
(A^T)^{-1}=(A^{-1})^T=\left[ \begin{array}{cc}
0.125 & -0.375 \\
0.25 & 0.25 \end{array} \right]
\]
数学的な証明
それでは、なぜ転置行列の逆行列 \((A^T)^{-1}\) と逆行列を転置した行列 \((A^{-1})^T\) は同じになるのでしょうか?以下のボックス内でこれについての数学的な証明を解説しています。必要な方はクリックしてボックスを開いてからご覧ください。
重要
正則行列 \(A\) があるとき、その転置行列の逆行列と、逆行列を転置した行列は同じになる。
\[
(A^T)^{-1}=(A^{-1})^T
\]
以上が逆行列の転置行列について知っておきたい性質です。しっかり覚えておきましょう。
なお、『線形代数で抑えておきたい逆行列の性質2つをわかりやすく解説』では、他に知っておきたい性質である「\(B^{-1}A^{-1}=(AB)^{-1}\)」と「\((A^{-1})^{-1}=A\)」についても解説していますので、ぜひ一緒にご確認ください。
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