余因子による行列式の展開とは?~アニメーションですぐわかる解説~

行列式の展開とは、簡単に言うと「高次の行列式を、次元が一つ下の行列式(小行列式)の和で表すこと」です。そして、小行列式を表すために「余因子」というものを使います。これらについて理解しておくことで、有名な逆行列の公式をはじめとした様々な公式の証明が理解できるようになります。

ここでは、これについて誰にでもわかるように解説します。直感的な理解を助けるためのに役立つアニメーションも用意しているので、ぜひご覧いただければと思います。

それでは始めましょう。

目次

1. 行列式の展開とは

行列式の展開は、最初は難しそうに見えるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。まずは以下の90秒ほどのアニメーションをご覧ください。\(3×3\) の行列式を例に行列式の展開を示しています。これによってすぐに全体像を理解することがでます。

このように行列式の展開とは、余因子 \(\Delta_{ij}\) を使って、ある行列式を、低次の行列式で表すことが行列式の展開です。

三次行列式の展開

\[\begin{eqnarray}
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|
=
a\Delta_{11}+b\Delta_{12}+c\Delta_{13}
\end{eqnarray}\]

これから文字でも解説しておきますので、ぜひ理解を深めるためにご活用ください。

2. 行列式の展開方法

ここからは \(3×3\) の行列式の展開方法を、あらためて文字で解説していきます。内容は上のアニメーションと同じです。

2.1. 小行列式とは

まず、\(3×3\) の行列式とは計算式は以下の通りでしたね(行列式については『行列式の意味と定義と求め方~行列式とは何か驚くほどよくわかる解説~』をご覧ください)

\[\begin{eqnarray}
|A| &=&
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|
& = & a(ei-fh) – b(di-fg) + c (dh-eg)\end{eqnarray}
\]

この行列式をよく見てみると、実はこの中に次元が一つ低い \(2×2\)の行列式が三つ含まれていることがわかります。それが以下の部分です。

\[\begin{eqnarray}
a(\overbrace{ei-fh}^{\left| \begin{array}{cc} e & f \\ h & i\end{array} \right|})
– b(\overbrace{di-fg}^{\left| \begin{array}{cc} d & f \\ g & i\end{array} \right|})
+ c (\overbrace{dh-eg}^{\left| \begin{array}{cc} d & e \\ g & h\end{array} \right|})
\end{eqnarray}\]

そのため\(3×3\) の行列式は、\(2×2\) の行列式を使って、次のように表すことができます。

\[\begin{eqnarray}
|A| &=&
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|\\
&=&
a\left| \begin{array}{cc} e & f \\ h & i\end{array} \right|
– b\left| \begin{array}{cc} d & f \\ g & i\end{array} \right|
+ c\left| \begin{array}{cc} d & e \\ g & h\end{array} \right| \tag{1}
\end{eqnarray}\]

このように高次の行列式の中にある、次元が一つ下の行列式を「小行列式」といいます。そして、この小行列式を余因子で表すことで、この展開式をさらにシンプルにすることが可能です。

2.2. 余因子とは

さて、あらためて眺めてみると \(3×3\) 行列式の中のそれぞれの小行列式は、次のように存在していることがわかります(符号にもご注目ください)。

\[
\left| \begin{array}{ccc}
(a) & * & * \\ * & e & f \\ * & h & i
\end{array} \right|
,\hspace{5mm}
− \left| \begin{array}{ccc}
* & (b) & * \\ d & * & f \\ g & * & i
\end{array} \right|
,\hspace{5mm}
\left| \begin{array}{ccc}
* & * & (c) \\ d & e & * \\ g & h & *
\end{array} \right|
\]

こうやって見てみると、これらの小行列式はそれぞれ…

  • \(3×3\) 行列式から1行目と1列目を除いたもの
  • \(3×3\) 行列式から1行目と2列目を除き符号を反転させたもの
  • \(3×3\) 行列式から1行目と3列目を除いたもの

というように法則性があることに気付きます。法則性があるということは、それらを記号にして、さらにシンプルに表すことが可能であるということを意味します。

そんなわけで線形代数の世界では、「ある行列式から \(i\) 行目と \(j\) 列目を除き、\((-1)^{i+j}\) を掛けた小行列」のことをデルタ記号を用いて、\(\Delta_{ij}\) と表すことになっています。この \(\Delta_{ij}\) が「余因子」です。

この余因子を使うと、3×3行列式の中のそれぞれの小行列は次のように表すことができます。

\[\begin{eqnarray} 
\Delta_{11}& = &
(−1)^{1+1}
\left| \begin{array}{cc} e & f \\ h & i \end{array} \right|
= ei-fh \\
\Delta_{12}& = &
(−1)^{1+2}
\left| \begin{array}{cc} d & f \\g &i \end{array} \right|
= −(di-fg) \\
\Delta_{13}& = &
(−1)^{1+3}
\left| \begin{array}{cc} d & e \\g & h \end{array} \right|
= dh-eg
\end{eqnarray} \]

これを先ほどの \((1)\) 式に当てはめると、\(3×3\) の行列式は以下のようにさらにシンプルに表すことができます。

\[\begin{eqnarray}
|A| &=&
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|\\
&=&
a\left| \begin{array}{cc} e & f \\ h & i\end{array} \right|
– b\left| \begin{array}{cc} d & f \\ g & i\end{array} \right|
+ c\left| \begin{array}{cc} d & e \\ g & h\end{array} \right|\\
&=&
a\Delta_{11}+b\Delta_{12}+c\Delta_{13}
\end{eqnarray}\]

このように、余因子を使って、ある行列式を次元が一つ下の行列式を用いて表すことが「行列式の展開」です。

3. 行列式の展開の性質

行列式の展開には、一つ重要な性質があります。ここまでは \(3×3\) の行列式で、第一行について展開しました。これは、どの行どの列で展開したとしても全く同じになります。

なお「第二行についての展開」とは以下のものです。

\[\begin{eqnarray}
|A| &=&
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|\\
&=&
– d\left| \begin{array}{cc} b & c \\ h & i\end{array} \right|
+ e\left| \begin{array}{cc} a & c \\ g & i\end{array} \right|
– f\left| \begin{array}{cc} a & b \\ g & h\end{array} \right|\\
&=&
d\Delta_{21}+e\Delta_{22}+f\Delta_{23}
\end{eqnarray}\]

そして、「第三行についての展開」とは以下のものです。

\[\begin{eqnarray}
|A| &=&
\left| \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right|\\
&=&
g\left| \begin{array}{cc} b & c \\ e & f\end{array} \right|
-h\left| \begin{array}{cc} a & c \\ d & f\end{array} \right|
+i\left| \begin{array}{cc} a & b \\ d & e\end{array} \right|\\
&=&
g\Delta_{31}+h\Delta_{32}+i\Delta_{33}
\end{eqnarray}\]

「第一行についての展開」も含めて、これらはすべて同じです。

\[\begin{eqnarray}
|A|
&=&
a\Delta_{11}+b\Delta_{12}+c\Delta_{13}\\
&=&
d\Delta_{21}+e\Delta_{22}+f\Delta_{23}\\
&=&
g\Delta_{31}+h\Delta_{32}+i\Delta_{33}
\end{eqnarray}\]

この性質は、行列式の公式を導き出す際に使うことになりますので、ぜひ覚えておきましょう。

4.まとめ

いかがだったでしょうか?以上が、余因子を使った行列式の展開です。冒頭でもお伝えしましたが、これを理解しておくことで、有名な逆行列の公式をはじめとした様々な公式の証明が理解できるようになります。

なお逆行列の公式については『余因子行列で逆行列の公式を求める方法と証明について解説』で解説しているので、続けてご確認頂くと良いでしょう。

慣れないうちは、途中で理解するのが難しく感じるかもしれません。そのような場合は、自分でも紙と鉛筆で書き出しながら、もう一度読み進めてみましょう、それに加えて、三次行列式以上の場合もぜひ自分で演算して確認してみてください。

そうすることによって理解は飛躍的に進みます。以上、ぜひしっかりと抑えておきましょう。



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