丸括弧()と句点についてわかりやすい文を書くためのルール

鉤括弧(かぎかっこ)の場合の句点の打ち方には決まりはない。ただし、わかりやすい文を書くという点に焦点を当てるなら、守った方がいいルールがある。ここでは、このルールについて解説する。

目次

1. 丸括弧とは

丸括弧は、主に、以下のように文中の語を補足するために使われる記号だ。

  • 元禄年間(1688〜1704)
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 栃木県那須郡黒磯町(現在の那須塩原市)
  • 「その他特殊な用法」の項(P.377)を参照のこと

または、以下のように挿入句にも使われる。

  • 戦争の悲劇(とくに広島と長崎の人々のそれ)を想像すると心を痛めずにはいられない。
  • こうした傾向は、初期の作品(たとえば『草枕』『虞美人草ぐびじんそう』など)に代表的に見られる。

この二つが、最もよく見られる丸括弧の使い方だ。

2. 丸括弧と句点の扱い

さて、それでは丸括弧と使う場合、句点の扱いはどのようにしたらいいだろうか。

句点の本来の働きである「文の終止を明確にする」という点から考えれば、これは、さほど悩む必要のない。単純に以下のルールに従えば良い。

  • 丸括弧が文中にある場合は句点を打たない。
  • 丸括弧が文末にある場合は句点を打つ。

それぞれ見ていこう。

2.1. 丸括弧が文中にある場合は句点を打たない

丸括弧が文中にある場合、明らかに句点は打つべきではない。以下の文を見てみよう。

  • 元禄時代は、狭義には元禄年間(1688年―1704年)をいうが、将軍徳川綱吉治政(在職1680年―1709年)をいう場合もある。
  • 元禄時代は、狭義には元禄年間(1688年―1704年)。をいうが、将軍徳川綱吉治政(在職1680年―1709年)。をいう場合もある。
  • こうした傾向は、初期の作品(たとえば『草枕』『虞美人草ぐびじんそう』など)に代表的に見られる。
  • こうした傾向は、初期の作品(たとえば『草枕』『虞美人草ぐびじんそう』など)。に代表的に見られる。

こうやって見比べてみると、句点が読みやすさを阻害していることは明らかだろう。そのため、丸括弧が文中にある場合は、その後に句点を打ってはいけない。

2.2. 丸括弧が文末にある場合は句点を打つ

一方で、丸括弧が文末にある場合は、明らかに閉じ括弧の後に句点を打つべきだ。なぜなら、次の文との境がわかりにくくなるからだ。例として以下の文章を見てみよう。

  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」(A大学ヤマダ教授)。しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」(B大学イトウ教授)。どちらが正解なのだろう。
  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」(A大学ヤマダ教授)しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」(B大学イトウ教授)どちらが正解なのだろう。

句点がないものは明らかに読みにくい。丸括弧が文末にある場合は、閉じ丸括弧の後に句点を打たなければいけない。

補足. 出版業界のルール

出版業界では、丸括弧が文末に来る場合で、それが補足説明である場合は閉じ丸括弧の後に句点を打ち、引用元を示す場合は丸括弧の前に句点を打つとしているようだ。

補足説明の場合は、以下で示しているように、それで問題ないだろう。

  • 詳しいことは、当日に現地でレクチャーします(ペンとメモ帳をご持参ください)。
  • 詳しいことは、当日に現地でレクチャーします。(ペンとメモ帳をご持参ください)

しかし「引用元を示す場合は丸括弧の前に句点を打つ」というルールに盲目的に従うのは、明らかに問題がある。以下のように。明らかに読みにくいものが正解となり、読みやすいものが誤りとなってしまうのだ。

  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」。(A大学ヤマダ教授)しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」。(B大学イトウ教授)どちらが正解なのだろう。
  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」(A大学ヤマダ教授)。しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」(B大学イトウ教授)。どちらが正解なのだろう。

「引用を示す丸括弧の場合は、丸括弧の前に句点を打つことでプロっぽい文になる」という主張をする者もいたが、それはあまりにも浅薄だ。例外が生じた時は、読み手にとって読みやすく、誤解がないような書き方を選択できる者が本当のプロだ。読者目線という発想がなく、曖昧なルールに盲目的に従うだけの者は、どこまでいっても二流だろう。そもそも、「プロっぽく見える」ことに自己満足しているようでは良い文章など書けるはずもない。

こうしたことから、出版社のこのルールを遵守すべきであるとは、私にはとても考えられない。百歩譲って、引用を示す丸括弧が段落末に来る場合は、このルールに従ってもいいかもしれない。しかし、それでは丸括弧が文末に来る場合は閉じ丸括弧の後に句点を打ち、丸括弧が段落末に来る場合は丸括弧の前に句点を打つということになる。それではダブルスタンダードとなり、無用な混乱を生んでしまうだろう。そのため実用的とはとても言えない。

以上のことから、シンプルに「丸括弧が文末にある場合は句点を打つ」とするのが最前だ。これに従うことで、書き手にとっても読み手にとっても、自然とわかりやすい文になる。

どうしても、出版社のルールに従いたい場合は改行をうまく使うほかない。

  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」。(A大学ヤマダ教授)
    しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」。(B大学イトウ教授)
    どちらが正解なのだろう。
  • ある専門家の弁によると「人間の能力は先天的なものである」。(A大学ヤマダ教授)しかし別の専門家によると「人間の能力は後天的でなものである」。(B大学イトウ教授)どちらが正解なのだろう。

ただし、このようにすると「文末に引用元を示す丸括弧がある場合は改行する」というルールが新たに加わることになる。だとしたら、このルールはその場しのぎの場当たり的なものに過ぎない。場当たり的なルールには、多くの人を強制的に従わせる正当性はない。

3. まとめ

以上のことから、丸括弧を使う際の句点の扱いについては、次の二つのルールに従うと良い。

  • 丸括弧が文中にある場合は句点を打たない。
  • 丸括弧が文末にある場合は句点を打つ。



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