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正則行列

当ページでは、正則行列について以下のことがわかります。

このページでわかること

  • 正則行列の定義
  • 正則行列の条件(判定方法)
  • 正則行列の性質
目次

正則行列の定義

正則行列とは、逆行列をもつ正方・・行列のことです。ある行列とその逆行列を掛け合わせると単位行列になりますので、数式では次のように定義できます。

\[AA^{-1}=A^{-1}A=I\]

* \(A^{-1}\):逆行列、 \(I\):単位行列

たとえば以下の行列 \(A\) は逆行列 \(B\) が存在するので正則行列です。また行列 \(B\) にとっては \(A\) が逆行列なので、\(B\) も正則行列であるということになります。

\[\begin{eqnarray}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 2
\end{bmatrix}}
\overset{B}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0.5
\end{bmatrix}}
=
\overset{B}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0.5
\end{bmatrix}}
\overset{A}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 2
\end{bmatrix}}
=
\overset{I}{
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}}
\end{eqnarray}\]

正則行列の条件(判定方法)

ある行列が正則行列かどうかを判定する最も一般的な方法は、その行列の行列式を求めることです。行列式の値が 0 以外の場合は、その行列は逆行列を持つため正則行列です。行列式の値が 0 の場合は、その行列は逆行列を持たないため正則行列です。

たとえば以下の行列の行列式の値は 0 ではありません。この場合は逆行列が存在するため、この行列は正則行列です。

\[\begin{eqnarray}
\begin{vmatrix}
1 & 0 \\
0 & 2
\end{vmatrix}
=
1 \times 2 – 0 \times 0 = 2
\end{eqnarray}\]

一方で以下の行列の行列式の値は 0 です。この場合は逆行列が存在しないため、この行列は正則行列です。

\[\begin{eqnarray}
\begin{vmatrix}
1 & 2 \\
1 & 2
\end{vmatrix}
=
1 \times 2 – 2 \times 1 = 0
\end{eqnarray}\]

他にも、正則行列には、行列の基本変形の左基本変形または右基本変形だけで単位行列に変形できるという特徴もあるので、これによって正則性を判定することも可能です。以下に正則行列の特徴をまとめておきます。

\(n\) 次正方行列 \(A\) が正則行列である場合、\(A\) には以下のような特徴があります。

  • \(A\) の階数(ランク)は \(n\) である。
  • \(A\) は左基本変形だけで単位行列に変形できる。
  • \(A\) は右基本変形だけで単位行列に変形できる。
  • 一次方程式 \(Ax=0\) は自明な解しか持たない。
  • \(A\) の行列式は 0 ではない。
  • \(A\) の列ベクトル同士は線型独立である。
  • \(A\) の行ベクトル同士は線型独立である。
  • \(A\) の固有値は、どれも 0 ではない。

正則行列の性質

\(A\) と \(B\) がともに \(n\) 次正則行列である場合、次のような性質が成り立ちます。

  • \({\rm det}(A^{-1})={\rm det}(A)^{-1} \)
  • \((A^{-1})^{-1}=A\)
  • \((AB)^{-1}=B^{-1}A^{-1}\)
  • \(\tilde{A}={\rm det}(A)^{-1}\tilde{A}\) (* \(\tilde{A}\) は余因子行列)

参考