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線形代数は何の役に立つのか

線形代数学は具体的に何の役に立つのでしょうか。結論から言うと、線形代数は応用例が多すぎて、とても全て列挙できるものではありません。

日常生活における算数の重要性を考えてみるとわかりやすいです。算数が何の役に立っているのかと聞かれたら、応用例が多すぎて、少し答えに詰まってしまう場合がほとんどだと思います。なぜなら算数はあらゆる場面で活用されているからです。

たとえば基本的な計算ができなければ日常生活を満足にこなすことはできません。買い物から交通代金から、毎月の生活費から、何から何まで算数が絡んでいます。また日常生活だけでなく、ほぼすべての学問分野で算数が使われており、算数がなければ学問の発展も社会の発展もありませんでした。

線形代数も算数と同じです。線形代数は算数と同じように、ほとんど全ての科学技術分野において必要不可欠な基盤的技術なのです。

線形代数が具体的に何の役に立つのかと聞かれたら、多くの人が答えに詰まってしまう理由は、このためです。応用分野が広すぎて、その中の一つを具体的に教えてくれと言われても、とても一つに絞ることができないのです。

断言できるのは、線形代数は現代の学問や産業において必要不可欠であるということだけです。

ただし、それでは多くの人が欲しい答えにはなっていません。そこで、線形代数が何の役に立っているのか、挙げられるものだけを挙げるとします。

機械学習における線形代数の活用例

まずは機械学習に限定すると、線形代数は次のような技術に使われています。これらの例は線形代数が機械学習の根幹を成す学問であることを示しています。

  • 機械学習において教師データや学習データとして扱われるデータセットそのものが行列である。
  • 画像の加工(コンピュータ・グラフィクス)そのものが線形変換である。
  • 機械学習でカテゴリカル・データを扱いやすくするためのメソッドであるワンホット・エンコーディングには、線形代数の行列とベクトルが使われている。
  • 統計学における線形回帰の最小二乗法に、線形代数の LU 分解や特異値分解といった算術が使われている。
  • 機械学習において、よりシンプルなモデルを見つけるための \(L^2\) や \(L^1\) といった正則化のメソッドは線形代数の算術そのものである。
  • データの次元削減のメインメソッドである主成分分析(PCA)には線形代数の算術である特異値分解が使われている。
  • コンピュータ・アプリケーションにおけるビジュアライゼーション(視覚化)やノイズリダクション(ノイズ削減)には線形代数の算術である行列の分解が使われている。
  • 自然言語処理における潜在意味解析には、線形代数における疎行列に対する行列の分解メソッドが必要不可欠である。
  • レコメンダ・システム(Amazon のおすすめ商品機能や Net Flix のおすすめ動画機能など)の開発には、線形代数における疎行列やベクトルの内積、ノルム、行列の分解などが使われている。
  • ディープラーニングは、線形代数の基本的なデータ構造であるベクトルや行列、テンソル、係数などが根幹となっている。

統計学における線形代数の活用例

線形代数は、機械学習だけでなく、線形代数学と並んで核となる技術である統計学にも大きな足跡を残しています。以下のようなものです。

  • 多変量統計におけるベクトルと行列の活用は線形代数からもたらされたものである。
  • 線形回帰に最小二乗法や加重最小二乗法といった解決策をもたらしたのは線形代数である。
  • 統計学の基本的な概念である行列(データ)の平均や共分散といった概念の計算には線形代数が使われている。
  • 多変量正規分布において重要な役割を担っている分散共分散行列は線形代数から来ている。
  • データ削減に使われている主成分分析は、線形代数の多くの算術から成り立っている。

さまざまな学問分野における線形代数の活用例

また機械学習以外の分野を見渡してみても、個人的に挙げられるものだけでも、以下のような重要なものごとに線形代数が使われています。

  • 工学において、トンネル建設のための安全なアーチ(スプリングライン)の計算に線形代数の行列の概念が使われている。
  • 経済学において、人口成長率の計算には線形代数のマルコフ行列が使われている。
  • アルゴリズムのシンプレックス法は線形代数のさまざまな算術が土台となっている。
  • フーリエ級数の信号処理は線形代数のさまざまな算術が土台となっている。
  • 統計学や確率論における回帰分析の最小二乗法の解法は線形代数によってもたらされたものである。
  • コンピュータ・グラフィックス(CG)における、グラフィックスの拡大縮小、回転、剪断などのあらゆるアニメーション技術は線形代数の線形変換そのものである。

これら以外にも、アインシュタインの相対性理論の論文で、線形代数のテンソル解析が使われています。また彼は「アインシュタイン方程式」という、物理学における線形代数の方程式まで発表しています。

ポイント

  • 線形代数は、日常生活における算数と同じように、現代のあらゆる科学技術分野や産業にとって必要不可欠な学問である。
  • 線形代数の応用分野は、日常生活における算数と同じように、とても述べきれるものではない。
  • 断言できるのは、線形代数はほとんどすべての学問や産業において必要不可欠であるということである。