主語とは?その意味や述語・修飾語との関係(主語述語問題付き)

主語は、辞書では「文の成分の一。文の中で、『何がどうする』『何がどんなだ』『何が何だ』における『何が』を示す文節をいう」と定義されている(大辞林)。ここでは、この意味を詳しく解説し、さらに日本語での主語の省略、述語や修飾語との関係などについて解説していく。

目次

1. 主語とは?小学生でもわかる説明

まずは主語というものを、小学生でもわかるように説明してみよう。

以下に示している通り、主語とは、「何がどうする」「何がどんなだ」「何がなんだ」の「何が」にあたる部分のことだ。

主語とは

この「何がどうする」「何がどんなだ」「何がなんだ」の三つは、文の中で最も基本的な形のものだ。その中で主語は、述語と並んで、文を構成する最も基本的な要素の一つであり、「どうする」「どんなだ」「なんだ」の部分である述語に対して、「何が(誰が)」という情報を与えるという重要や役割を果たしているのだ。

そのため、わかりやすい文を書いたり、文を読み解いたりするためには、主語が何かを意識することは、とても大きな意味がある。

2. 主語の意味のさらに詳しい解説

それでは、レベルを少し引き上げて、主語の意味をさらに深く見ていこう。日本を代表する国語辞典である『日本国語大辞典(通称:ニッコク)』では、主語は次のように定義されている。

文の成分の一つ。述語の示す動作・作用の主体、性質・状態をもつ本体を表わす。日本語では、主語は常に述語に先行し、また、主語が明示されなくても文が成り立つ。連用修飾語の一区分と見る考えも有力である。主語は現代語では助詞「が」を伴うことが多いが、説によって、「が」を伴った「桜が」の形を主語と呼び、あるいは、「桜が」の「桜」だけを主語という。主辞。

※補注 「話が好きだ」「水が飲みたい」などの「話」「水」を対象語と呼ぶ学説、また「彼は医者だ」「地球は動く」「酒は飲まない」など「は」を伴ったものを、「が」の主語と区別して題目語、提示語、提題語などと呼ぶ学説がある。

日本国語大辞典

この定義の中で特に重要なのは次の三点だ。

  • 主語は、述語が示す動作や作用を表している主体である。
  • 主語は、助詞「が」を伴うことが多い。
  • 日本語は主語を省略できる。

それぞれ確認していこう。

2.1. 主語は述語の主体を示す

主語は、述語の主体を表す語句だ。述語とは、動作(走る・話す等)・状態(青い・美しい等)・性質(天才だ・本である等)をあらわす言葉だ。詳しくは、『述語の意味や働きと「述語にかかる」ということの解説』で解説している。

例えば「飛ぶ」という述語だけでは、何が飛んでいるのかが分からない。そこに「鳥が」や「飛行機が」などの主語が伴うことで、初めて何が飛んでいるのかが明らかになる。

これが「主語は述語の主体である」ということの意味だ。この主体の明示化こそが主語の役割だ。

2.2. 基本的に助詞「が」を伴う

主語は基本的に助詞「が」を伴う。例えば「犬“が”歩く」「花“が”咲く」などだ。ただし、必ずしも「が」を伴う言葉が主語になるわけではない。

例えば、「本が好きだ」や「水が飲みたい」の「本が」や「水が」は主語ではない。なぜなら、主語とは述語の主体を明示するものだが、ここでの「本が」や「水が」は、「好きだ」や「飲みたい」という動作や作用の主体ではないからだ。「本」が何かを好きなわけではないし、「水」が何かを飲みたいわけではない。

つまり、これらの文では、発言者であり主語である「私」が省略されているのだ。その点を踏まえると、これらの文は厳密には次のような意味になる。

  • (私は)本が好きだ。
  • (私は)水が飲みたい。

そのため、これらの文の主語は、明示はされていないが「私は」だ。このように、助詞「が」を伴う言葉が常に主語になるわけではない。実際には、助詞「は」を伴う言葉が主語になる場合も多い。この点は重要なので覚えておこう。

2.3. 日本語では主語の省略が可能

主語は、述語の主体を示す重要な語句だが、日本語では主語が省略することができる。

例えば、以下の文には主語はないが意味は通じる。

  • 新しい服が欲しい。

この文は、より厳密に書くなら「私は新しい服が欲しい」となる。つまり、「私は」という主語が抜けているのだ。しかし、「新しい服が欲しい」という文を誰が発言しているのかが明らかであれば、わざわざ主語をつける必要はない。これは日本語の主語の大きな特徴だ。

英語ではそうはいかない。英語では、 ” I want new clothes.” とか “He wants new clothes.” というように、”I” や “He” という主語を決して欠くことはできない。

それでは、どういう場合に主語を省略すべきで、どういう場合に省略すべきではないだろう。簡単だ。主語がなくても理解できるなら省略するし、主語がなければ理解できない場合は省略してはいけない。

それぞれ見てみよう。

例えば、以下の二つの文では明らかに主語がない方がいい。

  • 「今日の昼に時間が空くので、もしご都合がよければ、ランチに行きませんか?」
  • 「今日の昼に私が時間が空くので、もしあなたがご都合がよければ、あなたと私がランチに行きませんか?」

このような簡単な意思疎通の場合、いちいち全ての文に主語をつけるのは邪魔くさい。

一方で、次のように、主語がなければ述語の主体を誤解してしまうような場合は、主語を省略するべきではない。

  • 「新幹線は300キロ、リニアモーターカーは600キロです。」
  • 「最高時速が、新幹線は300キロ、リニアモーターカーは600キロです。」

前者の文では、もしかしたら重さのことを話しているのだと誤解されるかもしれない。しかし、「最高時速が」と主語を明確にしておくと、そうした誤解を防ぐことができる。

以上のように、主語をつけることで文の意味の理解の妨げになるならつけるべきではないし、主語を省略することで誤解が生じる可能性があるなら省略するべきではない。

補足1. わかりにくい会話には主語が欠けている?

「わかりにくい会話には主語が欠けている」という主張は、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。こうした主張は、文において主語が特に重要な役割を果たしているという教えから来ている。しかし、実はわかりにくい会話に欠けているのは、必ずしも主語というわけではないのだ。以下のコラムでは、そのことをわかりやすく解説している。ぜひボックスを開いて読み進めてみて欲しい。

わかりにくい会話に欠けているのは主語ではない?

以前、あるサイトに「妻との会話が成り立たない」と悩む男性の投稿があった。その男性と奥さんとの会話内容を、以下に引用したので読んでみて欲しい。

妻:「そろそろいかないといけないんだけど」

夫:「どこに?」

妻:「買い物に。」

夫:「あぁ」

妻:「見てもらえる?」

夫:「何を?」

妻:「子供」

夫:「あぁ」

妻:「迎えに来てもらえるかなあ」

夫:「どこに?」

妻:「公園」

夫:「どこの?」

妻:「××公園」

夫:「あぁ」

妻:「私も向かうから」

夫:「どこに」

妻:「うちに」

夫:「で?」

妻:「途中で会えればいいと思って」

夫:「あぁ、そういうことか。で、どういうルートでいったらいいんだろう?すれ違いたくないし」

妻:「左の道」

夫:「誰がどこでどっちをむいての左だよ!」

夫との会話が成り立たない」発言小町

この夫は何にイライラしているのだろうか。それは、会話をたどっていくとわかる。

夫は、妻の発言に対して、「どこに?」「なにを?」「どこの?」と繰り返し聞き返している。この「どこに」「なにを」「どこの」は、まさに修飾語に当たるものだ。つまり、妻の発言に全く修飾語が足りていないから、いちいち聞かなければいけないという煩わしさにイライラしているのだ。

このことからわかるように、ほとんどの場合、わかりやすい文や会話のために重要なのは主語ではなくて修飾語だ。

「主語は特に重要」という概念は、英文法から来た誤解であって、実際は、日本語においては、主語も修飾語も同様に重要なのだ。このことからも、この後の補足で解説する「日本語では主語は連用修飾語に過ぎない」の話が正しいことがわかる。

補足2. 主語は修飾語の一つにすぎない?

ここまで解説してきたものが主語の一般的な知識だ。以上のことを知っておけば、一般教養としては全く問題ない。しかし日本語を真に理解して、自由自在に使いこなす上ではどうだろう。日本語を使って、より高度な次元でものごとを考えたり、書き表したりするためには、一般的な知識では限界がある。そこで、ここでは補足として次の点を解説する。興味がある方は、ぜひ以下のボックスをクリックして読み進めてみよう。

主語は連用修飾語にすぎない?

じつは主語・述語というのは、英文法を輸入して日本語に当てはめた概念であって、日本語を固有に分析して生まれた文法用語ではない。そして、成り立ちが全く異なる別の言語の理論を、日本語に当てはめるには無理がある。そのため、現在学校で教えられているような日本語文法は、突きつめて考えていくと、どうしても反故ほご(※役に立たないものごと)が目立つ。

その中で主語の扱いについては、特に多くの議論がある。たとえば、助詞「が」を伴う場合のみ主語とするか、それとも助詞「は」を伴うものも主語と認めるか、というものだ。

下図のように、助詞「が」を伴うが主語ではない言葉を対象語、助詞「は」を伴うが主語である言葉を題目語、助詞「は」を伴うが主語ではない言葉を提示語、提題語というように、文法的により厳密にわける考え方もある。

主語等の細かい分類

このように語句を細かく分析して定義づけることは、日本語の文法を厳密に理解するには重要なことだ。しかし、これを教えるということを考えると、過度な複雑化は歓迎されるものではない。

そこで次に解説するように、主語は連用修飾語の一つであるとする考え方が有力になっている。

主語は連用修飾語の一種?

じつは日本語においては、主語は修飾語の一種に過ぎない。いや、そもそも日本語には主語というものはもともと存在しない。

このことは少し考えてみれば、すぐにわかる。

英語は主語がなければ文として成立しない。しかし日本語では主語がなくとも文は成立する。例えば「快晴だ」というような簡単なコミュニケーションの時ですら、英語では “It is sunny” というように、架空の主語 “It” を立てなければいけない。日本語には、英語でいう主語と同じものは存在しない。

このことから日本語では、主語は連用修飾語の一つであるという考え方が有力になってきている。

この点について詳しく解説しよう。

修飾語とは?主語述語との見分け方や被修飾語等の解説』で解説している通り、修飾語は、「いつ」「どこで」「どのような」「なにを」「どのように」という情報を加えることで、文の意味を具体的にしてくれる語句だ。

例えば「私は考える」という文は、主語と述語のみで成り立っている。ここに修飾語が加わると、「私は、今日、書斎で新しい構想を静かに考える」というように、意味がより具体的になる。

主語・述語・修飾語

修飾語のもう一つ重要な特徴は、それは文を作る上で不可欠な要素ではないということだ。修飾語がなくとも文は成立する。

それでは日本語における主語はどうだろうか。ご存知の通り、英語と違って、日本語は主語がなくても文として成立する。上の文は「私は」という主語を抜いて、「今日、書斎で新しい構想を静かに考える」でもまったく問題ない。

このことから、もし主語が、文が成り立つために必要不可欠な要素だとしたら、日本語には本来主語というものは存在しない。日本語で主語とされてきたものは、単に、述語にかかって「何が(誰が)」を示す連用修飾語の一つに過ぎないのだ。

3. 理解が深まる主語述語問題7選

最後に、いくつか主語述語問題を解いてみよう。

以下の文の主語を答えなさい。
  • タロウ君がハナコさんを見る。

これは簡単だ。「タロウ君が」が主語で、「見る」が述語だ。

以下の文の主語を答えなさい。
  • コーラが欲しい。

一瞬、「コーラが」が主語だと答えてしまいそうだが、それは不正解だ。

「コーラが」は助詞「が」がついている名詞なので、確かに主語に見える。しかし、この文では、コーラという飲み物が生き物のように意思を持って何かを欲しがっているわけではない。つまり、この文におけるコーラは主体ではない。あくまでも誰かが欲しがっている対象物であり、修飾語の一つに過ぎないのだ。

そのことは、次のように書き加えてみるとわかりやすい。

  • 私はコーラが欲しい。

つまり、「コーラが欲しい」の主語は、省略されている「私は」だ。

以下の文の主語を答えなさい。
  • 缶を開けたらコーラが泡となって勢いよく吹き出した。

今度は、「コーラが」が主語だ。なぜなら、この文では「吹き出した」という述語の主体は「コーラ」だからだ。他に省略されている主語はない。

以下の文の主語を答えなさい。
  • コーラの缶を開けたら勢いよく泡が吹き出した。

今度は「泡が」になる。この文では「吹き出した」という述語の主体は「泡が」だからだ。

以下の文の主語を答えなさい。

次は少し難問だ。

  • 私がコーラの缶を開けたら勢いよく泡が吹き出した。

さあ、答えはわかるだろうか。そう、正解は変わらず「泡が」だ。この文は次のような構造になっている。

文頭の「私が」は「コーラの缶を開けたら」にかかる修飾語に過ぎず、「吹き出した」という述語の主体は、あくまでも「泡が」なのだ。

以下の文の主語を答えなさい。

もう一つトリッキーな難問を解いてみよう。

  • タロウ君は成績が良い。

この文は、「タロウ君は」と「成績が」の一体どちらが主語なのだろうか。この文は下図のような構成になっている。

まず、「成績が良い」は主語と述語の関係にあると同時に、「タロウ君は」という主語に対する述語節でもあるという関係にある。つまり、「成績が」も「タロウ君は」も主語だ。しかし、この場合「成績が」は普通に主語と呼ばれ、「タロウ君は」は「総主語」と呼ばれる。今のところ、どちらを真の主語とするかは言語学者の間でも意見が割れており、確実に言えることは、どちらも「何が」を示す語句であるというところまでだ。

以下の文の主語を答えなさい。

それでは、上の文が少し変わって次のようになったらどうだろうか。

  • タロウ君の成績が良い。

今度は、次のような構造になっている。

「タロウ君の」は、あくまでも「成績が」の修飾語であり、主語にはなり得ない。そのため、この文の主語は「成績が」だ。これは、上で示した二つの条件の通りなので、あまり迷わなかったと思う。

以上、文中において、主語(※「何が」を示す語句)が何なのかを素早く判別できるように練習しておこう。

4. まとめ

以上が、主語についての知識の全てだ。補足も含めて全て読み込んでいただいたなら、主語について、世間一般よりも一段も二段も上のレベルの知識を有していると言える。

じつは主語・述語という概念は、英語などの日本語とは異なる言語の文法に由来するものだ。そのため、突き詰めて考えると、日本語における主語の理論には、どうしても無理が出てしまう。

それよりも、日本語における主語は連用修飾語の一つであると見る方が自然だ。そして、その理解の方が、日本語の読解力・作文力・論理的思考力の向上につながる。

もし、あなたが、試験で良い点数を取れるようになるだけでは満足できず、日本語をもっとうまく操るための本質的な力を鍛えたいのであれば、ぜひ、以上の知識を大切に覚えておいて欲しい。

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